えいえいと きづきしおのが みちのりも
ゆめもむなしく あんろのゆくすへ
(拙作「惜春のレクイェム」より)
月日が過つのは実に速いもので、私が当センターに入所してまもなく丸一年を迎えます。
受傷してからの、この二年半という歳月でさえも、またたく間のようでした。突として我
が身に降りかかって来た災厄は並大抵のものではなく、受傷の当座は、重い四肢麻庫の障
害を終生背負うべき非運を信ずまいとひたすら念じるばかりの日々が随分長く続いたよう
に思います。狼に追われた羊の、断末魔に打ち拉がれた姿そのものでした。ナゲキ、ボヤ
キ、投げやりの気持ちのままに、徒に一月また一月と月日は過つばかり。それでもかなり
の時期まで、自らの奇跡的回復力を信じてやまなかったのです。
世にしいふ 冬来たりなばと 念じつつ
忍の一字で我が春を待つ
(前出 同)
しかしサディスティックな現実は、私にとりついたまま離れることはなく、私の生活は水
面に浮遊する木葉の如く、ただ与えられたスケジュールに乗って流されていくだけのよう
なものでした。気持ちはあせっても訓練の成果は遅々として現れてこないジレンマ・・・
そんな頃にY君との出会いがあり、伊東センターの存在を知り、新転地での療養という事
に思い到りました。
1984年10月人所
そして間もなく、「自立への挑戦」と銘打ち「失ったものを数えるな……」「保護を与え
るより、機会を与えてください etc…のサブテーマのもとに行われてた去年の文化祭。私に
とって、これは実に感激的でした。様々な展示物や発表。そこに見たものは、どれもが障
害に坑してうちこむひたむきな仲間の姿であり、私に新たに勇気と希望を与えてくれたの
です。今思うに、入所直後の私への何よりのカンフル剤であったようです。
又、その後の訓練生活の中でも、創意工夫によって、日常生活動作の拡大に努める入所
者達の姿勢を見るにつけ我が良きお手本になり励みになりました。お陰様で、この一年間、
この私にも着実に訓練成果がでてきました。更に自分の課題で未達の事柄に向かっていき
たいと思います。
誰でも人として生まれて来た以上、使命とは言わずとも何らかの存在価値なるものがあ
る筈です。私は障害を負う身で社会的な庇護を人一倍要します。それでも、願わくば私が
うけている恵沢に報いて、どういう形で、いつのことになるか、少しでも「お返し」でき
るようになりたいと思っています。日頃、自分の社会復帰を考えるかたわら併せて思い及
ぶことです。
みちばたの 雑草に咲く花 目にとめて
我が心にも ゆめいちりん
1985年九月