リハビリテーション私論~2000年夏

自立生活モデルとは

1.医療モデルとILモデル~専門家主導から当事者主導へ~

 <私自身の体験> 
 私は、スポーツ事故で頚髄損傷という障害をもって、17年たちました。 日常の生活勣作 
のほとんどに介助が必要です。けがをして、病院に入院し、リハビリテーションを受けま 
した。当時としては、私の障害の重さは最重度でした。障害がより軽い人は、残された機 
能を回復し、伸ばして新しい生活方法を身につけるというリハビリプログラムを受けてい 
ましたが、リハビリテーションのスタート段階において私の場合は、車椅子に乗れるよう 
体を硬化させないように、というだけのものでしたOそれでも、決まった時間は、リハビ 
リ室に運ばれて時間を過ごす、というのはとても苦痛であり、それよりも心の部分のケア 
が必要だ、と痛切に思いました。 
 病院では車椅子を自分でこげるようになる訓練などが一生懸命行われますが、実際に、 
街中にでて手動車椅子で自由に動くことは、段差や坂、自動車の交通などのためにすごく 
難しいです。街中で、手勣の車椅子で一人で動いている人がほとんどいないことを考える 
と、そのようなリハビリにはもともと限界があります。 
 医療現場で行われることは、生命の維持を第一に考えられていて、実際の生活現場の必 
要には、あまり対応しきれていないと思います。私たちがリハビリテーションのことを考 
えるときには、「専門家」達の考えばかりを鵜呑みにするのではなく、障害を持つ当事者の 
立場から考えていこうと思います。 

<自立生活モデルとは…> 
 自立生活センターの画期的な点は、これまで福祉の受け手としてのみ位置づけられてき 
た障害を持つ人を、サービス提供者に位置付けたことです。 
 自立生活センターの始まりは、これまで「患者」としてのみ扱われてきた障害を持つ人 
たちが、「患者」ではなく、一人の人間として扱ってほしい、と考え行動したことから始ま 
っています。自立生活運動の父といわれるエド・ロバーツは、始め、大学近くの病院から、 
大学の友人達の手を借りてカリフオルニア大学に通っていました。卒業後、地域に必要な 
サービスがあれば病院や施設ではなく、地域に暮らせる、と考え、自分たちのニーズから、 
介助サービスや自立生活プログラム、などのサービス提供を始めました。その考え方には、 
サービスの消費者が、自分たちの受けるサービスを自分たちで管理する、消費者管理とい 
う考えも含まれています。これは、それまでの専門家主導の考え方とは180゜違う考え方で 
した。  

2.「リハビリテーション」の過程と「専門家」の関わり

  リハビリテーションには4つの範躊がありますO中でも最も重要だと思うのは、社会的 
リハビリテーションです。職業リハビリテーションも重要なものとして行われ、実際職業 
リハビリテーションを受ける人の1割から2割は職業につきますが、あとの7割から8割 
は、職業プログラムを受けても、実際の就労には結びついていない、という実態がありま 
す。障害が重くなるほど、職業問題以前にむしろ社会生活をどう築いていくかが、重要な 
点になってきます。 
 CILで提供しているプログラムは、専門家が障害を持つ人のために作ったものではなく、 
障害を持つ人自身が自分たちのニーズから行ってきたものです。医師、PT、OTなどのリ 
ハビリテーション関係者も、障害を持つ人が地域で暮らしていくための様々な情報、介護 
や住宅、移勣など、またメンタルな問題についてはほとんど対応できません。 CILは、当 
事者の立場から、これらのニーズにこたえるサービスを提供してきました。 

3.「自立」観の変化  ADL主眼からQOLの重視

 大多数のお年よりは、介護を受けることが必要な身体になったとき、なるべく迷惑をか 
けないようにとか、人の手をわずらわせる位なら、死んだほうが…などと考えてしまう。 
みんなそこでもがくと思います。それは、何でも人の手を借りず、一人でできることがい 
いことだ、という考え方が社会の隅々まで行き渡っているからではないでしょうか。私自 
身の10何年を振り返ったときに、その問題を自分のなかできちっと整理できたことと、自 
分の障害を受容できたことが重なるように思います。 
 乙武君がテレビにでてきて、人の感動を誘うような場面の時も、やはり、“障害を持って 
いても一人でできる”という所を強調するような、そういう考え方が背景にあるのがわか 
ります。(ある意味痛々しささえ感じるのは、私だけだろうか?)私は、「人の手を借りて 
生きねばならないことが、その人の価値を下げる」、という意識を変えていきたいと思いま 
す。人の手を借りて生きることとその人の価値とは何の関係もない、ということを伝えつ 
づけていきたいと思っています。介助者の皆さんも、障害を持つ人に「がんばれ」と簡単 
に言うのではなく、むしろ「がんばらなくてもいいんだよ」と、肩の力を抜いてあげるよ 
うな働きかけをしてほしいと思います。 
 伝統的なリハビリテーションプログラムでは、なんでも「一人でできる」ということに 
最高の価値があって、一人でご飯を食べられる、一人で車椅子をこいで移動できる、とい 
うことを目指して行われます。みなさんも、介助に入っていて、「この人は自分で食べられ 
るのになんで食べないんだろう」などと思うときがあるかもしれませんね。それは、その 
利用者が、自分の生活の中で、「自分でたべること」にがんばるのではなく、他のことにエ
ネルギーを使いたい、と思っている、ということもあるので、そう理解してくれれば、新 
たな関係が作れるかもしれませんね。限られたエネルギーを一番大切に思うことに傾注す 
ることが本質的に重要だと思います。 
 障害を持つ人の自立とは何か、「生活の本質」とは何か、という問題がありますが、それ 
を考えることは、障害を持たない皆さん自身の生活の中で、重要なものとはなにか、生活 
の本質とは何か、と言う事を考えることにもなると思います。 
 いきいきと心豊かに暮らしていくことができるように、そして人生の最後に「ああ、生 
まれて良かった、生きていて良かった。」と思えるような生き方をしていきたいものですね。 

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